共通フレーム(きょうつうふれーむ)
SLCP-JCF / software life cycle process - Japan common frame
コンピュータ・システムの開発において、システム発注側(ユーザー)と受注側(ベンダ)の間で相互の役割や業務の範囲・内容、契約上の責任などに対する誤解がないように、双方に共通して利用できるよう用語や作業内容の標準化するために作られたガイドライン。
システム構築・運用の受発注において、契約上のトラブル防止、作業内容の確認、役割分担の明確化、社内作業標準の策定や人員計画、見積もり精度の向上、品質確保などに利用される。
共通フレームは、システムの構想・企画、開発、運用・保守、廃棄における標準的な作業の範囲とその内容・項目を分類したもので、実際のシステム開発・運用の作業や手順を定めたものではない。本来の目的は、実際の作業を共通フレームで策定するのではなく、ユーザー/ベンダ独自の開発方法・プロセスを、共通フレームの体系に対応させることにより、相互にどの役割を担っているのかを理解したり、異なるベンダの見積もりを比較したりすることである。
その内容は、システム開発に関連する作業を「プロセス」「アクティビティ」「タスク」「リスト」の4階層で表現。「プロセス」はシステム開発作業を役割の観点からまとめている。以下、プロセスの構成要素を「アクティビティ」、アクティビティの構成要素を「タスク」、タスクの構成要素を「リスト」というように、作業を細分化して表現している。共通フレーム2007におけるプロセスのレベルの構成は、次のとおり。
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共通フレームは、通商産業省 産業構造審議会情報産業部会(当時)の『緊急提言-ソフトウェア新時代』(1992年)、『ソフトウェアの適正な取引を目指して』(1993年)などの提言を受けて、情報処理振興事業協会(IPA)の下に設置された「システム開発取引の共通フレーム検討委員会」が1992年から検討を始めた。同委員会は、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)、情報サービス産業協会(JISA)、日本電子工業振興協会(JEIDA)、日本規格協会(JSA)などの団体、ベンダ、通産省、大学などを含む、産官学のメンバーからなり、すでに国際標準化組織ISO/IEC JTC1/SC7委員会で審議中だったソフトウェア・ライフサイクル・プロセスの委員会原案(後のISO/IEC 12207:1995)をベースに作業を進め、1994年3月に『ソフトウェアを中心としたシステムの取引に関する共通フレーム』(共通フレーム94)として発行した。
翌1995年8月にISO/IEC 12207が正式に発行となり、1996年7月にそれを日本語化したJIS X 0160が日本工業規格として発行すると、共通フレームも改訂を行い、『ソフトウェアを中心としたシステム開発および取引のための共通フレーム 1998年版』(共通フレーム98)として発行された。なお、日本電気計測器工業会(JEMIMA)も計測制御システム分野のカスタム・ソフトウェア向けに『システム開発取引の共通フレーム』(初版:共通フレームJEMIMA95、改訂版:共通フレームJEMIMA97)を発行している。
共通フレームとISO/IEC 12207(JIS X 0160)の違いは、プロセスのレベルでは「企画プロセス」「システム監査プロセス」が追加されている点、アクティビティのレベルで「開発プロセス」「運用プロセス」に“業務”の視点から項目が追加されている点などである。
その後、ISO/IEC 12207の追補1(2002年)/追補2(2004年)発行やWebアプリケーションの普及、超上流プロセスの可視化や信頼性ガイドライン要素などを踏まえて、2007年9月に『共通フレーム2007』が公表されている。
参考文献
▼『システム開発取引の共通フレーム――SLCP-JCF94〈1994年版〉』 共通フレーム検討委員会=編/大野豊=監修/通産資料調査会/1994年3月
▼『共通フレーム98――SLCP-JCF98〈1998年版〉ソフトウェアを中心としたシステム開発および取引のための共通フレーム・国際規格適合』 SLCP-JCF98委員会=編/通産資料調査会/1998年10月
▼『共通フレーム2007――経営者、業務部門が参画するシステム開発および取引のために』 情報処理推進機構 ソフトウェア・エンジニアリング・センター=編/オーム社/2007年10月
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